Study in ESTONIA

限りなく院生に近いニート

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Hackathonで賞を取ったらしい

先日Tallinnで行われたHackathonに参加して来た。
週末の金土日をフルで使ってのハッカソン。テーマはデザイン系がメインだったのかな今回は。
そんな中なんとなく参加した僕の目的は、優勝でも起業でもなく無料飯である。そう。Hackathon開催中の3日間は、朝昼夜全ての飯が無料で提供されるのだ。これまでも、無料飯のために数々のpitchingやビジコンに参加してたのだが、それくらい貧乏学生である私にとって無料飯は大切なイベントであり、自分の参加理由を十分満たすものでもあった。
Hackathon初日。
アイデアを持っている人は、全員の前で簡単にその自分のアイデアについてプレゼンをし、
一緒に3日間戦ってくれる同志を募らなければならない。
もちろんアイデアがなかったり、人前に出るのがちょっと恥ずかしいかな、という人は
椅子に座って他の人がプレゼンしているのをみて、どのチームに入るかを吟味する。
僕は人前に出るのは好きな人間なので、とりあえずノリで僕もAR関連でプレゼンテーションに臨んでみた。
ただ、人前に出るのが好きというのは、「目立ちたい」というような一般的な承認欲求から派生するものとは少しずれており、
プレゼンテーションは、普段全く注目されない相手にしてもらえない僕にも、自分が好きなように話していい機会を必然的に与えてくれるものであり、
そしてみんながそれなりには聞いてくれるという、その感覚を味わいたいだけだった。
実際のプレゼンテーションは、良いアイデアを持って来た訳でもなく、
その場のノリで話しただけなのでみんなの前で話している間、
「俺、何言ってるだ」状態に何度か陥ったが、なんとか切り抜けることができた。
そのあと、自分のアイデアが書かれた看板を持って、自分に興味を持ってくれたものをチームに誘い込む。
しかし、ここで問題が発生した。
ジェルで頭をカチカチに固めたビジネスかぶれ中国人や、
表参道の路地裏の小洒落た店で売ってそうなジャケットに寿司みたいな髪型をした白人ビジネスマンかぶれには人が集る一方、
部屋着に有機野菜みたいな髪型の僕の所には誰一人来やしない。
「そうか。僕はこのまま収穫されることなく土にかえってしまうのか」
結局ステージをおりてしまえば、誰一人僕に注目してくれず、
それを仕方ないと思って納得したりしたが、とはいえ待っていても3日間何もしないで終わってしまうので、
自分から話しかけていく戦法に出ることにした。
もちろんこういうイベントは、やたらコミュニケーションを大事にしたがる人間が多く集まっているせいか、
話しかければ何人か話をすることはできる。しかし、見たところ皆結局他のチームで寿司を握るようだった。
その中で一人、同じようにARでHackathonに臨んでいる女性を見つけた。
話してみると彼女もまだ仲間が見つかっていないらしい。売れ残った同士、と言ってしまうとどこか寂しい響きだが、
せっかくだから一緒に挑戦してみない?と提案してみた。
「いいけど…」
彼女は暗い同意をしてみせた。
顔を覗くと今にも泣きそうな顔である。
そんなに僕に話しかけられたのが悲しかったのか、それとも僕が一人ぼっちであることへの同情なのか。
彼女は深夜の団地のエレベーターのように暗く、悲しそうだった。
そのあと、もう一人日本人の友人を取り入れ、3人でやろうか、という形に進んでいった。
とりあえずは一人ぼっちを逃れ、一緒にやる居場所を見つけることに安堵を覚えたが、
問題だったのはそのあと開会式の途中で、彼女が自分のアイデア看板をゴミ箱に捨てて帰ってしまったことだった。
自分のアイデアを誰にも認めてもらえないということは、とても悲しくて寂しいことなのかもしれない。
Hackathonという小さいコミュニティーですら、人は周りに承認されたくて、
それが受け入れられないとなると、自分の全てを否定された感覚が全身にギスギス痛むのかもしれない。
さっきまで彼女が舞台でプレゼンをし、仲間を募っていたことを覚えている人は、この会場にどれだけいるのだろうか。
僕の心には、悲しみだけがこだました。
地球の反対側で、二人取り残された僕たちジャパニーズ。
別に二人でできないことはないが、海外のHackathonで日本人だけで組んでも流石に面白くない。
そのことをHackathonのオーガナイザーに伝えにいくと、
「他にまだ余っている人いるよ」
と教えてくれた。
確かにまだ数名どのチームに参加するか決めかねている優柔不断キラキラ女子大生が残っていた。
近くに寄って行くと、
「あなたたちのアイデアは何?」
と食い気味に聞いてくるので、簡単に内容を答えると、
「私このチームにするわ」
と言ってエストニア人の子が急遽一人加わることになった。
しかし、彼女様子からして自分が決まってないことに焦っていたのか、決まればどこでもいいというような態度だった。
彼女もまた自分を受け入れてくれる場所、自分の居場所難民だったのだろう。
日本人は周りを気にするとはいうが、海外も同じである。
むしろ僕には外国人の方が周りを気にしているように見えた。

僕と日本人の友人のスーパーハカーと、最後ギリギリで僕のチームに加わったエストニア人の女性でこの三日間を翔けることになった。
それぞれのチームにそれぞれ作業を進める教室がわり与えられ、それぞれチームごとに散っていく。
今回会場として使われたのは市内の大学だったのだが、貸し切った教室がそれほど多くなかったせいか、
各チームにつき一つの教室ではなく、僕らも他の1チームと一つの教室を共有することになってしまった。
もう一つのチームは8人くらいの大グループで、昼間っからテラスでビール飲んでそうな奴らが楽しそうに自分たちのビジネスの議論をホワイトボードを使って進めていた。
真っ白な部屋に、彼らの会話が不協和音を奏で響き渡り鼓膜を濁らせる。
その一方で、3人でプロダクト開発、ビジネス準備を進めていかなければならない僕らだった。
エストニア人の彼女のチンプンカンプンな話が僕らを困らせたり、なかなか議論が進まなかったりと生産性のない時間も過ごしたが、
その混沌とした中でもなんとなくやることが見えてきた。
話を進めていくと、彼女は市内のビジネス系の学校に通う学生で、マーケティングなどを勉強しているという。
しかし、あまりマトをいた意見や、ビジネス面に精通している感じは伝わってこないので、僕は一人不信感を抱いていた。
その日は、今後2日の予定と、方向性のみを定め、あとは次の日までにできるところまでプロダクト開発を進め、
彼女にはビジネス面をお願いした。
家に帰って早速開発に取り掛かる。
5畳くらいしかない戦時中の潜水艦の監獄のような部屋に、ルームメイトと二人で暮らしている。
部屋には無感情な二段ベットと机と椅子が二つずつ与えられている。
ルームメイトは今回のハッカソンには参加していなかったが、たわいもない会話で僕の徹夜作業の会話相手になってくれた。
「ねみー」
ブラックコーヒーを片手に画面に向かう。
コーヒーの苦味が部屋の中に充満し、目が覚めてくる。
微量のカフェインが無意識の中、脳に錯覚を起こさせ集中力があがってくる。
と同時に、僕は違和感に気づいた。チームメイトのエストニア人が信頼できない。
チームメイトを信頼できないのは致命的なことだ。
しかし、誰に何を言われても信頼できないのである。
これは僕が日本人だからなのか、単に人に頼めず自分でやってしまう性格だからなのか、それとも人間不信。
結局その夜僕は、結局その夜はコーヒーを三杯程度を口にし、
プロダクト開発とビジネス面のマーケティングやファイナンスなどのまとめを、
せめて明日スムーズに作業及び議論ができる程度には一人でやってしまった。
コーヒーの匂いが部屋まだ部屋にかすかに残っていた。
次の日は朝から会場に向かった。
「あれ。まだ誰もきてねーじゃん」
チームの中で、最初にきたらしい。
スーパーハカーは体調不良で昼頃くるという連絡を受けたが、エストニア人の方は音信不通だ。
ここで昨日抱いた違和感と不信感が確実なものになっていったが、僕はなぜかそれを望んでいたのかもしれなかった。
仕方がないので、昨日の作業部屋に行って一人で自分のMacBookの前で作業を進めていった。
同じ部屋では、昨日と同様にもう片方のチームが勝ち誇ったような笑顔でホワイトボードを使って議論を進めていた。
僕には理解のできない文字列がホワイトボードを黒く埋めていた。
その中で、僕は一人でやる恥ずかしさと敗北感に見舞われたりもしたが、
大好きなボーカロイドとFuture Houseの音楽を聞くことで気分を誤魔化した。
人間の生身の声を聞くよりも、人工的な機械の声を聞くほうが心の位相にマッチし、気分を上げてくれる。
気づいた時には昼食の時間になった。
スーパーハカーと合流できたが、同じチームであるエストニア人の女の子をもう一度そのイベントで見ることはなかった。
そもそも最初からやる気がなかったのか、僕らのチームでは承認欲求が致されないと感じたのか、
それでも僕は彼女が無言でチームを抜けたことを残念だとは一瞬も思わなかった。
その後も、まるで最初から彼女が存在していなかったかのように時間はいつも通りのペースで進んでいった。
昼食から夕方にかけての時間、たまたま近くにいたジョージア人の女性と話す機会があった。
どうやら会場になってる大学に通う学生でデザイン系だという。
今ハッカソンに参加している趣旨話すと、アイデアを気に入ってくれたらしく、ぜひチームに入れてくれという流れになった。
ちょうど一人空きができてタイミングだった。こちらとしても助かる。
そこで開発は僕らジャパニーズが行い、ビジネス面を任せることにした。
とはいえ、昨日の夜ビジネス面もある程度まとめてしまっていたので、それを彼女に渡し推敲してもらう程度だ。
問題だったのは、開発の方だった。思っていたよりも開発途中でいくつもの難点にぶつかりスムーズに進まない。
「俺、絶対エンジニア職にはつきたくねーわ」
と僕は吐露したりも見せた。結局その日は夜遅くまで会場に残ったが、終わる目処は立たなかった。
目はカラッカラに乾燥し、頭には血が巡っていない。脳筋の僕にとっては最悪な状態である。
「俺の家でやらない?」スーパーハカーが僕に提案してきた。
「そうだね。そのほうが捗るでしょ」とそれに僕は同意し、カバンに荷物をまとめ小雨降る寒空の下、彼と彼の家に向かった。
家に向かう途中のバスでは、ハッカソンには全く関連のない日常的な話が弾んだが、
お互い疲労のせいか言の葉に力はなく、まるでパンクしたサッカーボールのように重く重力を感じて落下していった。
彼の家に着いてからもやることは同じだ。画面の前に夜の街灯に集る虫みたく張り付き、マリオネットのようにキーボードを叩く。
キーボードを叩く無機質な音と、クリックの単調なつまらない音だけがエストニアの寒い夜に微かに振動させていた。

結局二日目は、朝まで電子画面に向かっていた。
最終日は午後にそれぞれのチームが自らのビジネスモデルについての3分間のピッチングをしなければならない。
アイデアに重みを置いたアイデアソンとは違い、実際にプロトタイプやランディングページをできるところまで製作する必要がある。僕らのチームも、ランディングページと実際にプロダクトが動いているシーンを発表で見せたかった。
しかし、それにしてはガラクタ一つ作れない僕にとっては時間が無さすぎた。
最終日の朝は、スーパーハカーの家に集合して、二人でギリギリまで開発に力を注ぐことを前日別れる前に約束していたので、
彼の家に朝早く向かわねばならなかった。
寝不足と疲労で頭はズンと重く、目は空気に触れるたびにズキズキ痛み視界は霞んでしまう。
流木のように硬く滲んだ体を起こすも、自分の力で体を動かすというより体を前のめりに倒して、自分の体重で進むように歩く。
外はまだ青暗く、空気は冷たく重い。
休日だからなのだろう、バスには2、3人くらいしかいなかったが、みんな覇気のある顔ではない。
そりゃそうだ。
氷点下、休日朝早くから、わざわざ白と黒の絵の具のみで描かれたモノクロの世界に飛び出すどこに幸せがあるのだろう。
全くエナジーを使うものだ。それゆえ僕は、友人の家の最寄りに到着し、バスを降りる頃にはその日一日のパワーをほとんど使っていた。
「おはよう」スーパーハカーと、潰れたトマトのような声を吐き出す。
部屋は昨日と何も変わっていなく、彼もまた同様にやつれた顔をしている。
おそらく昨日は遅くまで取り組んでいたのだろう。
僕がもっとエンジニアとしての力があれば、より効率的に動けてそれぞれの負担を減らせたのだろうと、惨めな気持ちにもなった。
午後の最終発表のために14時くらいには仕上げなければならなかった。
声をだす力もなく、無言で二人で昨日できなかったところから、続きを進めていく。
最終的な今回の目標の形にはかすってはいた。
しかし、芯を射止められない。
手を伸ばせば届きそうな距離あるのは、二人ともわかってはいたが光の届かないその先は手探りで探すしかない。
片っ端からできることをやっていく。そうして気づいた時には昼の12時になってしまっていた。
それでも朝から一歩も前に進んでいなかった。
タイムリミットまで2時間くらいしかないが、焦りがあるわけでもなくそれを凌駕する疲労と気だるさだけが部屋を埋めていた。
携帯を数時間ぶりに見ると、一件のFacebook未読メッセージを発見した。
「 Where are you now ? 」
もう一人のチームメイトであるジョージア人からの連絡だった。
彼女はすでに会場に着いているみたいで、僕ら二人を探しているようだ。
「先行ってプレゼンの準備とビジネス面のまとめしてくるわ」と僕はスーパーハカーに告げた。
「ギリギリまでやってから行きます」スーパーハカーは答えた。
僕は彼をひとり部屋に残し、雪が薄く積もって滑りやすくなった道を足元に気をつけながら早歩きで、急いで会場へ向かう。
朝とは街のコントラストはガラッと変わり、休日で満足感と希望に満ちた色とりどりの人々が行き交う。
駆け足にバスに乗り込み、目的地へ急いだ。
会場では、彼女はひとりでプレゼンテーションの準備やスライド製作をソファーでしていた。
僕が着いた時には大体の軸は出来上がっていたこともあり、それに加え、発表まで時間がほとんどなかったため、特に改善はできなかった。
仕上げに取り組みながら、誰がプレゼンテーションをするのかという話題にもなったのだが、
謎に彼女はものすごくプレゼンをしたそうなのが雰囲気から読み取ることができ、僕も特にこだわりがなかったので譲ることにした。
みんな目立ちたいし、自分を認めてもらうのに必死なんだなと僕は蔑んだ。
結局そのあとギリギリにスーパーハカーも会場に到着したが、ついに目標してたものの完成は実現しなかった。
そのため、初日に僕がある程度作っていたプロトタイプのプロトタイプのようなものをプレゼンで使うことに決まった。
残念な気持ちな反面、しょうがないと納得した自分もいた。
そしてあとは発表をただ聞くだけと思うと、ホットし身体にまとわりついていた重りから解放されたような気分になった。
結果発表会場の部屋の鉄のドアの張り紙に、各チーム名が上から羅列されており、プレゼンの順番が記載されている。
僕らのチーム名は『Objectify』といういかにもな名前で、張り紙の上から3番目にそのアルファベットが書かれていた。
薄暗い部屋で、ステージは華麗にライトアップされており、目には大きなスクリーンがある。
会場内、席は空いていたが、僕は一番後ろで立ち見をすることにした。
というのも、Facebookで最終発表の様子をLive配信しようと思っていたからである。
特に自分の結果には全く興味もなく、そして他のチームの結果にも興味がない。
3日間それなりに楽しかったし、何より3日間の食費が浮いたのが一番の満足だった。
それをみみっちいと思われようが苦学生である僕には全く気になることではない。
発表は、無駄にテンションの高い場慣れした司会者にそって行われた。
受賞の発表には、それぞれのスポンサーから直接チーム名が呼ばれる。
自分のチームの名前ではない名前が一つずつ確実に呼ばれていく。
呼ばれたチームは、まるで自分の人生が最高のものとして輝き出し、スターになったかのような笑顔と歩幅でステージに上がり、大げさなカメラで記念写真を取る。
僕はそれをただ単に後ろからクタクタになった白い布ケースに入ったiPhoneでLive配信していただけだった。
すでに、5,6個の授与が終わり、Robotexというその名の通りロボット系の団体からの授与になった時のことである。
「Objectify」
マイクを通し、力の抜けた深い声でその名前が呼ばれた。
近くに座っていた友人にiPhoneを渡し、前に受賞されに行っている間、配信を変わってもらう。
他の二人は先にステージに上がっていたので、会場の後方から駆け足で前に上がった。
他のチーム同様、授与する側の背の高い白人男性と握手をし、また大げさなカメラで写真をとった。
とはいえ、優勝したわけでもないのでさほど嬉しいというわけでもないが、頭の中には、
「ブログの記事ネタできたわ」という腐った言葉がこだました。
そのあとは、そのままの流れで発表は単調に進んだ。
優勝したチームはやたら人の多いチームで、僕は全く発表を聞いていなかったので、どんな内容なのかは知らない。
最後の発表が終わると、参加者全員でステージに上がり、恒例行事のようにみんなで写真をとったが、僕はちゃっかり真ん中に忍んだ。
そういうところだけは、ちゃっかりしてたい性格なのだ。
そして、全体写真を撮り終えたあとは、後夜祭のような感覚で主催者側からケーキが届けられ、みんなで食べながら賑やかに三日間の戦いに幕を閉じた。
ビジネスとテクノロジーという言葉が聞きたくもないのに、飛び交う今日この頃。
多くの人間は、スティーブ・ジョブズやイーロンマスクに憧れ、隙あればイノベーションという言葉を乱用し、
ビジネスマンごっこ、エリートごっこを始める。
Hackathonは、普段0から新しいものを全て自分たちの手で作り上げていく、それは実に面白い機会である。
そこには、自分のスキルを生かした戦いをする人間もいれば、ただ単に目立ちたいだけ、自分の知識を見せびらかしたいだけの人間も多く存在する。
Hachathon自体、そういう彼らの満足感を満たす経験として「消費」の時間になっていたことも、この3日間を通して感じた部分もあった。

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